のと同じ理屈になってしまう。それなら、そいつらに負けないくらい、いいのはありはしないかというのが、
直列6気筒に話を持ってきた所以だ。たしかにV8やV12は、すばらしいと思う。でもその味わいとは異なり
これだけにしかない特別の良さを持っているという意味で直6はいい。いい直6だったら、V8やV12に
引け目を感じることはない。
いろんな直6に乗ってきた経験からすると、直6は小排気量がもっともフィーリングがいいという気がする。
どうも排気量が大きくなるほど、また新しいエンジンになるほど、一般に大味になる傾向のようで2JZの3リッ
ターしかり、ジャガーの9J(4リッター)しかりだった。なぜそうなのかというのが、これが問題なんだが、
誰も大排気量の直6は大味になるなんて言ったためしはなく、説明が不可能だ。ただ乗ってきた経験
からは、そうと言えるとしか言いようがない。
それに一部同じ意見がときどき見られるが、エンジンは新しく効率を追求されると、そのパワーと効率
の反面、どんどんフィールをそがれてしまう。これも残念ながら事実だという気がしてならない。最近は、
もう70年代や80年代のエンジンを搭載した車など滅多にないから、もうあの頃のエンジンフィールを
おぼえている人はそう多くないかもしれない。しかし、どうもあの頃のエンジンのほうが、パワーや効率は
ともかく全然すばらしい“味”だったという気がする。それは国産に限らずの話で、あえていうなら、もう今
ではBMWの2リッター前後の直6のなんのへんてつもないエンジンくらいしか、いい直6は残っていない
と言っても過言ではない気もするくらいだ。
そんな中でトヨタのM型、1G型、日産のL型、80~90年代までのBMW直6がどんな風だったか、
乗ったことのない若い世代やもう過去のことで忘れてしまったお父さんたち、元彼女で今はお母さんたち
になってしまったあの頃の女たちを思い浮かべながら書いてみようかと思う。とは言っても、直列6気筒
をどう表現したらわかってもらえるかとずっと考えているんだけど、どうも正直うまくいかない。なぜか
こういうのがいいんだ、ってのがうかんでこない。なんか漠然と陶酔感に浸っていたようで、まるで芳醇な
洋酒の味わいを説明するようなもので、味わっている感覚は確かだけど、それをどう表現したらいいか
ってなるとどうも難しい。しかたないから、他のエンジンはこうで・・・・と相対比較の中で説明するしかない
だろうと思う。それなら、得手の分野とも言えなくもない。